認知症の原因|早めに知っておきたい18のリスク因子

自分や家族は認知症になるのか?

誰だって心配になります。

もちろん認知症は誰でもなる可能性があります。同時に、認知症になる確率を上げる要因というのも、確かに存在するようです。

確率を上げる要因を避ければ、確率を下げる要因にもなります。

そこで、現時点で認知症のリスク要因として、考えられていることを出来る限りリストアップしてみました。

年齢

「誰でも十分に年齢を重ねれば認知症になる」という医師もいるくらいで、年齢が上がるほど認知症になるリスクは急増していきます。

65歳未満で発症する場合は若年性認知症と区別されていることからも分かるように、認知症リスクが一気に上がり出す年齢が、65歳前後です。

65歳以上になると、5年ごとに発症率は2倍になると言われ、85歳以上になると30%~40%の人が認知症になってしまうと言われています。

とはいえ脳の萎縮自体は認知症は数十年かけて進んでおり、認知症の発症が長年の積み重ねの結果だとすれば、年齢が上がるほど発症率が上がるのは不思議ではありません。

将来、認知症になりたくないのであれば、人生の早い段階から脳の健康を維持する生活を続けることが、現時点では唯一の対策と言えます。

遺伝子

40代や50代で発症する若年性認知症には遺伝子が主な原因で発症するケースもあり、家族性アルツハイマー型認知症と言われます。

現段階でAPP、プレセニリン1、プレセニリン2といった遺伝子によって、早期にアルツハイマー型認知症が発症することが分かっています。

ただし、明確に遺伝的要因で発症するケースは全体の1%程度です。

逆に99%の認知症は65歳以降に発症します。

ところが高齢期に発症する通常の認知症であっても、発症しやすい遺伝子を持った人と、そうでない人がいます。

アポリポタンパク質E(通称アポE)という遺伝子の型が、認知症の発症率に影響していることが分かっています。

アポE遺伝子には3つのタイプがあり、アポE2、アポE3、アポE4があります。

この内、アポE2は認知症のリスクを下げ、アポE3は平均的で、アポE4遺伝子を持っていると認知症のリスクが上がると言われています。

私たちの遺伝子は両親から受け継ぐので、アポE遺伝子を2つ持っているのですが、アポE4遺伝子を1つ持っていると認知症のリスクが3倍になり、2つ持っていると認知症のリスクが12倍~15倍に跳ね上がると言われています。

家族性アルツハイマー病と違い、アポE4を持っていても、必ずしも認知症になるわけではありません。

自分がアポE4を持っているかどうか?知りたくない人もいるでしょうし、知っておきたい人もいるでしょう。

知りたい人は病院や、検査キットで調べることも可能です。

男性と女性

女性のほうがアルツハイマー病になりやすいと言われますが、本当でしょうか?

たしかにアルツハイマー型認知症になる人は、男性よりも女性のほうが多いです。

ただし、その一番の理由は、女性の方が長生きだからです。

年齢が上がれば当然認知症を発症する確率は上がるので、それだけであれば、必ずしも女性だからアルツハイマー病になりやすいと考える必要はないかもしれません。

ただし、男性、女性それぞれの性別に応じた認知症のリスクはあります。

男性の場合、高血圧や高血糖、タバコ、アルコールと言った生活習慣面でのリスクが増える傾向にあります。

女性の場合、更年期以降のエストロゲンの減少が影響する可能性があります。(エストロゲンは脳細胞を守る働きがあります。)

エストロゲンの減少が直接的に脳の防御力を下げる可能性もありますし、更年期うつなどが間接的に認知症のリスクを上げる可能性もあります。

また、アポE4遺伝子を持っている場合、男性よりも女性のほうが
アルツハイマー病のリスクが高くなりやすいという報告もあります。

総合的に考えると、男性だから、女性だから危ないというよりも、むしろ男性・女性それぞれのリスクに対処するべきだと、個人的には考えています。

糖尿病・高血糖

糖尿病だと、アルツハイマー病のリスクが2倍に高まると言われています。

糖尿病の90%を占めるⅡ型糖尿病の特徴として、インスリンが分泌されても効かなくなるインスリン抵抗性があります。

つまり、インスリンを必要とする細胞が、目の前にあるインスリンを受け取れなくなってしまうわけです。

そして、アルツハイマー病で最初に異変が起こる、脳内の海馬などの部位にもインスリン受容体は豊富に存在しています。

つまり脳内でインスリン抵抗性が高まった結果、海馬などの脳細胞がうまくエネルギーを取り込めず、ダメージを受けやすくなる、らしいです。

認知症は『Ⅲ型』糖尿病だ、という研究者もいるくらいで、糖尿病や高血糖と認知症は深い関係があると言われています。

高血圧

認知症の約2割を占めるのが脳血管性認知症です。

脳血管性認知症の主要な原因は脳卒中や脳の血管の小さな詰まり(サイレントストローク)なので、当然ながら高血圧は脳血管性認知症のリスクを上げることになります。

高血圧だと、脳血管性認知症のリスクは6倍にもなり、アルツハイマー認知症になるリスクも約2倍になると言われています。

中年期の高コレステロール

フィンランドで1万人以上を対象にした調査によると、『中年期』に高コレステロール(240mg/dl以上)だった人は、将来アルツハイマー型認知症になる確率が166%に増加したそうです。

コレステロールと認知症との関係は諸説あり、脳の酸化、炎症の増加、アミロイドβの増加などの影響が指摘されているようです。

高齢期(70歳以上)になってからコレステロール値の影響ははっきりしていないようで、むしろ40代~50代の状態が将来に影響すると言われています。

うつ病

統計的にはうつ病の病歴がある人は、将来認知症になるリスクが2倍になると言われています。

とはいえ、人生のうち3ヶ月うつ病になっていた人と、30年うつ病になっていた人が同じリスクということはないでしょう。

むしろ、認知症が脳細胞の死滅や脳内の神経伝達物質の減少により引き起こされることを考えると、うつ病になったこと自体よりも、うつ病になっている間の脳内の神経伝達物質の減少が影響しているように思われます。

うつ病になっても、早期に治療して回復すれば、認知症のリスクもそれほど上がらないのかもしれません。

甲状腺機能障害

甲状腺機能低下症は認知症と間違いやすい病気の代表です。認知症と同じような症状が出ますが、甲状腺機能低下症を治療することで、認知症のような症状は消えます。

ただし、もうひとつの不安要素として、甲状腺機能の異常自体が将来の認知症リスクを高める可能性が指摘されています。

ハーバード大学とボストン大学が共同で行った1800人を対象にした調査では、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症といった、甲状腺機能障害を持つ女性は、甲状腺機能が正常範囲の女性に比べて、アルツハイマー型認知症になる確率が2倍だったそうです。(なぜか男性の場合は女性のような影響はなかったようです。)

特に女性の場合、認知症と間違わないためにも、将来の認知症リスクを減らすためにも、早めに甲状腺機能検査を受けておくのも良いかもしれませんね。

歯周病や虫歯

歯周病は感染症です。

歯茎の病原菌が出す毒素は脳にも悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。

コロンビア大学の調査では、歯周病の多い高齢者グループは、歯周病の少ない高齢者グループと比べて2~3倍、記憶障害や認知機能障害になる確率が高いという結果が報告されています。

また、虫歯の場合は最終的に自前の歯がなくなることで咀嚼による脳の刺激が減り、認知機能が低下してしまうという側面もあります。

さらに認知症になった後、最終的に肺炎が直接の死因になることが多いですが、認知症の肺炎は誤嚥(食べ物をうまく飲み込めないこと)で起こることが多いんです。

口内の健康は、食べるという機能の維持にも大切なことです。

慢性的な睡眠不足

睡眠不足だと、アミロイドβの蓄積が起こりやすいと言われます。

アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβは、健康な人の脳内にも存在しますが、生産と分解のバランスが崩れると、過剰に脳脳内に蓄積してしまいます。

だからこそアルツハイマー病を防ぐためには、アミロイドβの『蓄積』を防ぐことが大切と言われます。

少なくともマウスを使った動物実験では、睡眠不足状態にしたマウスの脳内でアミロイドβの蓄積量が激増したというデータがあります。

慢性的な睡眠不足は認知症のリスクも高めるかもしれません。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、脳細胞に深刻なダメージを与える可能性も指摘されている症状です。

無呼吸状態の時に脳細胞に酸素が行き渡らなくなり、脳細胞が死んでしまったり、脳内で炎症が起こったりするからです。

睡眠時無呼吸症候群が直接的に認知症やアルツハイマー病を引き起こすかどうかは不明ですが、少なくとも認知機能の低下を引き起こすリスクは高いと思われます。

認知症にならずに一生を過ごすために、できるだけ認知機能を維持することが大切です。その意味では睡眠時無呼吸症候群はできるだけ早めに治療したほうが良いと言えますね。

視力低下と目の病気

視力が悪い人は、認知症を発症する確率が2倍近くになると言われています。

またアルツハイマー病の人は、緑内障になっている確率が、他の人よりも3倍高いとも言われます。

ただし、視力が低下していても、病院を受診している人の場合は、将来の認知症リスクは下がると言われます。

少なくとも視力は学習能力や認知能力に密接に関係しているので、認知機能を下げないためにも、視力の低下を防いだり、適切な矯正や治療を受ける必要性は高いでしょう。

肥満

UCLAとピッツバーグ大学の研究によると、肥満の人は、正常体重の人に比べて脳年齢が16歳老けているそうです。

また中年期の肥満が将来の認知症リスクを高めるとも言われていて、40代で肥満体型だった人は、70代以降にアルツハイマー病になる確率が3倍、脳血管性認知症になるリスクは5倍と言われています。

逆に高齢になってから太っても認知症のリスクは上がらないとも言われているので、長期間肥満体型でいることが、なんらかの脳のトラブルにつながっている可能性があります。

たとえば肥満だと、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが効きにくくなるレプチン抵抗性が生じることが知られています。このレプチンは記憶力にも深い関係があるとホルモンです。

できるだけ早い段階(できれば中年期までに)で肥満体型を脱出して、それからも体型を維持すれば、将来的に認知症のリスクを下げられる可能性があります。

有害物質

イギリスの双子(一卵性双生児)を調べた調査があります。2人は遺伝子・教育・仕事(2人とも科学技師)・生活習慣などがほとんど同じで、死亡年齢も70代後半とほとんど同じでした。

ところが、農薬を大量に扱う技師だったひとりは最後の16年間は認知症をわずらい、もうひとりは生涯、頭脳明晰でした。

農薬を扱う仕事の人は、そうでない人にくらべて、42%ほど認知症のリスクが高いという報告もあります。

農薬に限らず、有害物質は多かれ少なかれ、脳に悪影響を与える可能性が高いものです。

避けられるものは避ける努力をしたほうが良いでしょう。

重金属

少し前まではアルミニウムがアルツハイマー病の主要原因ではないかと疑われていました。飲料水のアルミニウム濃度が高い地域で認知症の発症率が高いという調査が出たからです。

事故により通常の20倍という多量のアルミニウムが脳に蓄積した女性に認知症の症状が現れたケースもあります。

制汗スプレー(アルミニウムは毛穴を塞いで汗を止める)なども危険視された結果、現在でも海外のナチュラル志向の化粧品やデオドラント剤には「アルミニウム不使用」などと書かれていますね。

ただその後、飲料水の調査にも不備が見つかったりして、現時点でもアルミニウムと認知症の関係について、それほど明確な結論は出ていないようです。

アルミニウムだけを危険視するよりも、水銀などを含めて、有害金属全体に注意を向けたほうが合理的かもしれません。

飲料水に関しては普通の浄水器を使えば、ほぼ全ての有害金属を除去することができるはずです。

過度のアルコール

少量の飲酒であればアルツハイマー病のリスクを下げることが知られています。

ただし女性であればワイングラス1.5杯、男性なら2~3杯程度が限度で、それ以上になると今度はリスクが上がっていくようです。

特に悪いのは、いちどに大量に飲む場合です。

例えば一年に2回以上、意識を失うまで飲むことがあると、将来の認知症発症率は10倍になるそうです。

月に一度以上、ビール5本程度を飲む人だと3倍程度にリスクが増えるとも言われます。

ちなみにこれはフィンランドの調査なので、平均的な日本人の場合、許容量はさらに少ないでしょう。

タバコ

基本的に喫煙量が多いほど、認知症の発症リスクは高くなります。

1日1箱の喫煙で、認知症の発症年齢が2~3年早まるという研究もありますし、喫煙者は認知症の発症リスクが倍増するという意見もあります。

タバコには100種類以上の有害物質が含まれていることを考えると当たり前といえば当たり前の結論です。

活性酸素や炎症の増加、血管性認知症につながる脳卒中などのリスク増加などが、喫煙で認知症リスクが上がる理由と考えられています。

頭部への物理的ダメージ

頭部への物理的ダメージが認知症の引き金になることはよく知られています。

ボクシングの後遺症としてパンチドランカーが有名ですが、脳しんとうを繰り返すことで発症する慢性外傷性脳症は、その数十年後に認知症につながると言われています。

50歳以上の元アメフト選手は、記憶障害が出る確率が平均的男性の5倍という調査結果もあります。

コロンビア大学の調査では、頭部外傷を負った経験のある高齢者は、そうでない高齢者に比べてアルツハイマー病を発症する確率が4倍だそうです。

まとめ:遅らせる、確率を下げる

まず認知症の7割を占めるアルツハイマー病について、発症メカニズムが完全に解明されているわけではありません。脳血管性認知症や外傷性認知症を除き、脳の変性を伴う認知症の実態は、まだまだブラックボックス状態です。

また根本的な治療薬もないのが現状です。アリセプトなどの認知症治療薬は、認知症の進行を数ヶ月~数年『遅らせる』ことができる言われていますが、認知機能が元に戻るわけではありません。

とはいえ、この『遅らせる』ということは、ある意味では認知症対策の本質のような気がします。

例えば、認知症の発症年齢を全体的に5年遅らせることができれば、認知症になる人の数は半分になるとも言われています。

さらに認知症の症状自体が、数十年かけて徐々に認知機能が低下していくという、白がグレーになり黒になっていくようなプロセスです。

『認知症になる、認知症にならない』という二元論ではなく、少しでも遅らせる、少しでも確率を減らす、という対策の積み重ねこそが将来の結果を変えるほとんど唯一の方法なのかもしれません。

少しでも将来の認知症発症のリスク下げるために、出来ることを行うための参考になれば幸いです。