3つの認知症テスト|長谷川式・MMSE・CDTのやり方

いまや自分や自分の家族が認知症になったとしても全く不思議ではない時代です。

「記憶力や注意力が落ちた気がする」

そう思ったら本当は専門の医療機関で診断を受けるのがベストです。

とはいっても、わざわざ病院に行くのは気が引けることもあるでしょう。

そんな時は、まず自宅でできる認知能力のテストを行ってみるのがおすすめです。

自宅でテストを行う際の注意点として、結果に問題がなかったから認知症ではないという判断をしてはいけません。

もともと認知症用のテストは、専門家が質問の仕方、間のとり方などを正確に行い、総合的な判断を行ってはじめて正確な判定ができるものです。

さらに現状では知能的に問題がなくても、水面下でアルツハイマーが進行しているようなケースもありますので、正確な診断には画像検査を含めて詳細な検査が必要です。

それでも自宅で認知症テストを行ってみることで、自分や家族の認知症の兆候に気づくきっかけにはなります。

認知症になった場合にどのような認知機能が低下するのか?おおまかに把握することもできます。

早期発見や予防という意味でも、定期的に自分と家族の認知機能をチェックできるツールを知っておくと、色々と便利ですね。

そこで、日本の医療・介護現場で最も広く使用されている長谷川式スケール、国際的に広く使用されているMMSE、時計描画検査を紹介したいと思います。

長谷川式簡易知能評価スケール

長谷川和夫教授が開発し、医療・福祉の現場で広く使用されている認知症診断用の問診テストです。

問診者と回答者に別れて行います。

全9問、30点満点で、20点以下は認知症の疑いがあるとします。

1:お歳はおいくつですか?(記憶:1点)

・+-2歳までの誤差であれば正解として1点。

2:今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?(時の認識:4点)

・年が正解で1点、月が正解で1点、日が正解で1点、曜日が正解で1点。

3:私たちが今いるところはどこですか?(場所の認識:2点)

・自発的に回答できれば2点。自発的回答ができない場合、「家ですか?病院ですか?施設ですか?」と聞き、正しい選択ができれば1点。

4:これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。⇒①桜・猫・電車、②梅・犬・自動車。(即時再生能力:3点)

・質問者は①と②のどちらか一方を選択する。ひとつ答えられるごとに1点。

5:100から7を順番に引いてください。100-7は?それからまた7を引くと?(計算力/注意力:2点)

・93が答えられれば1点、93が答えられなければそこで打ち切り0点。86も答えられればプラス1点。

6:私がこれから言う数字を逆から言ってください。①6-8-2、②3-5-2-9。(記銘力・注意力:2点)

・2-8-6が答えられば1点。2-8-6が答えられなければそこで打ち切り0点。9-2-5-3が答えらればプラス1点。

7:先ほど(問4)覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。(遅延再生能力:6点)

・ヒントなしで答えられれば、ひとつの言葉につき2点。答えられない場合、それぞれ「植物/動物/乗り物」のヒントを与え、答えられば1点。例えば桜、猫は答えられ、「乗り物」のヒントで電車が答えられたら5点。

8:これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。(記銘力:5点)

・例えば時計/鍵/ハサミ/鉛筆/硬貨など相互に無関係なものを見せる。ひとつの品物ごとに1点。

9:知っている野菜の名前を出来るだけ多く言ってください。(発語の流暢性:5点)

・途中で10秒待っても次の野菜が出てこない場合、そこで打ち切る。
・5個までは0点、6個で1点、7個で2点、8個で3点、9個で4点、10個以上で5点。

MMSE

アメリカで1975年に開発された認知症診断用の質問検査です。

ミニメンタルステート検査(Mini-Mental-state-Exam)を略してMMSEと言われます。

30点満点で24点以上で正常、20~23点は軽度の知能低下、10~19点で中度の知能低下、0~9点は重度の知能低下と診断されます。

1:今年は何年ですか?いまの季節は何ですか?今日は何曜日ですか?今日は何月何日ですか?(日時:5点)

それぞれの質問につき各1点。

ここの病院の名前は何ですか?ここは何県ですか?ここは何市ですか?ここは何階ですか?ここは何地方ですか?(現在地:5点)

それぞれの質問につき各1点。

3:3つの無関係な物の名前(桜、猫、電車など)を伝え、すぐに復唱させる。(記憶:3点)

・1つ答えるごとに1点

4:100から順に7を引いていく。5回まで。(計算:5点)
・1回ごとに1点、5回できれば5点。間違えたらそこで打ち切り。

5:問い3で伝えた物の名前を再度復唱させる。(想起:3点)

・1つ答えるごとに1点

6:時計を見せ「これは何ですか?」、鉛筆を見せ「これは何ですか?」(単語:2点)

7:次の文章を繰り返させる。「みんなで、力を合わせて綱を引きます。」(復唱:1点)

8:口頭で指示を出す。「右手にこの紙を持ってください」⇒「それを半分に折りたたんでください」⇒「机の上に置いてください」(指示理解:3点)

・1つできるごとに1点。

9:「次の文章を読んで指示に従ってください。『右手をあげなさい』」(文章理解:1点)

10:何か文章を書いてもらう。(文章構成:1点)

意味のある文章が書ければ1点。

11:次の図形を書き写してもらう。(図形把握:1点)

時計描画検査(CDT)

特にアルツハイマー病の発見に有効とされるのが、時計の絵を描いてもらう『時計描画検査』です。

英語だとCDT(Clock Drawing Test)となります。

長谷川式スケールやMMSEは被験者の教育レベルが高いほど点数が高くなりやすいデメリットがあります。もともとの知性の高さが認知機能低下を隠してしまうのです。

逆に教育レベルが低い場合、認知機能の低下は少なくても、実際以上に点数が低くなりやすいことになります。

その点、時計描画検査は、被験者の教育レベルなどに影響を受けにくいのがメリットです。

検査方法がとても簡単なのも特徴です。オーソドックスな時計描画検査のやり方としては、A4程度の白紙の紙を渡して「時計を描いてください」と言うだけです。

時計描画検査のポイントは、きちんと『時計』と分かるだけの構成要素を描けているかどうか、です。

一度、自分でも時計を描くことを想像してみてほしいんですが、どのような絵を書けば、それが時計だと分かるでしょうか?

時計を描く、ということは単純に空間的な認識能力が必要なだけではありません。

・時計はどのような機能を持っているか?
・ちゃんと『時計』として伝わるためには何を書けば良いか?

このような論理的思考力やコミュニケーション能力も必要な作業です。

機能的に考えると時計の構成要素は①外枠②数字(もしくは目盛り)③針(時針・分針、人によっては秒針も)の3つとなります。

一般的には丸い枠に、1~12の数字、2本(時針のみ)もしくは3本(時針+分針)の針を書くというパターンがほとんどでしょう。

これらの要素をきっちり書けているかどうか、まずチェックすることになります。

特にアルツハイマー病では、空間認識能力や数字に関する認知機能が低下しやすいと言われています。

よくあるケースとしては、丸い枠が大きく歪んでいたり、針が1本しかなかったり(=何時か分からない)、数字が一部分に偏っていたり、数字が抜けているケースなどがあります。

ぶっちゃけ簡単ですよね?

おそらくこの文章を読んでいる方であれば、「すごく簡単」という印象を持つのではないでしょうか?

例えば通常の知能レベルを計るIQテストであれば、最も簡単な問題でもこんな感じです。

「2, 4, 6, 7, 8 のうち、仲間ハズレを答えなさい」

(答えは7∵偶数ではないから)

明らかに問題のレベルが異なるのが分かると思います。

知能テストの難易度からも、認知症になってしまうと、それまで当たり前にできたことができなくなる、というのが分かると思います。

認知症テストでは初期の知能低下は計れない?

長谷川式スケールにせよMMSEにせよ、認知症の「診断」のためのテストなので、知能が低下を始めた初期段階ではテスト結果に差が出ないことが問題点として指摘されています。

「日常生活に支障がある」レベルまで低下してはじめて、テスト結果にある程度の差が出るようになります。

特にもともとの知能の高い人は、認知症テストでスコアに差が出る頃には、すでに本来の自分から大幅に知能が低下している可能性が高くなります。

つまり認知機能低下の早期発見という意味では、役不足な感があるんです。

そこで認知症の兆候を早期に発見するためには、他のチェック方法を検討する必要があります。

感覚はあてにならない?

自分の知能が低下し始めた時は自分でも気づくのではないか?と考える人もいるかもしれません。

残念ながら、知能低下を自分自身で自覚できる可能性はそれほど高くありません。

例えば緑内障という視野が欠けてしまう目の病気があります。緑内障は明らかに視野が欠けているのに、なかなか自覚できない病気です。

健康な目の人が視野の一部を手や物で隠した場合はすぐに違和感に気づきますが、緑内障による視野の欠けが徐々に進行した場合、脳が視野の欠けた部分を補完したり慣れが生じるので、なかなか自覚することができないんです。

さらに脳には「言い訳をする性質」があります。

誰も自分が認知症だとは思いたくありません。そのため、多少の知能低下であれば「今日は調子が悪い」「疲れている」「集中していない」といった言い訳を続けてしまい、いつまでも本当の状態を認めることができないのです。

それどころか上記の長谷川式スケールやMMSEで中程度以上の認知症が疑われる状態(かなりの知能低下)であっても、それまで「自分の知的能力は正常」と思っていた人が多いようです。

自分で自分を客観的に判断することがいかに難しいことかがよく分かりますね。

数値で分かるテストが必要な理由

人間の感覚は簡単に麻痺します。

オナラをしても「クサい!」と思った次の瞬間には臭さを感じなくなります。ガスのニオイ自体は残ってるのに嗅覚が麻痺するからです。

自分のオナラのニオイがどの程度か正確に判断するためにはどうすればよいのか?

ニオイテスターのような装置を置いて、数値でニオイレベルを表示する方法が一番確実です。

数字はウソをつきません。

クサくない↔クサいというのは感覚で変わりますが、
ニオイレベル20↔85という数値で表現されれば、感覚の入り込む余地がなく「本当にクサいんだ」というのを認めざるを得ません。

つまり、自分の脳機能が維持されているか低下傾向にあるのかを判断するためには、数値化されたテストを受ける必要があるんです。

定期的なチェックが大切な理由

数値化されたテストであっても、一度受けただけでは、それが本来の自分の能力なのか、脳機能の低下によるものなのか判断できません。

同じ体重の人であっても、一人は昔より太ったかもしれませんが、もう一人は昔より痩せているかもしれません。

認知症の予防や早期発見のためには、知能の低下傾向を把握することが大切なのです。

そこで、単純に数値化されたテストを受けるだけではなく、定期的に同じ難易度のテストを受ける必要があります。

ところが一般の人向けに、ちょうど良い知能テストというのは、あまり見当たりません。

知能テストといえばIQテストですが、インターネット上などで公開されているIQテストは難易度もテスト結果もばらつきがあり信頼性が低いのがネックです。

IQ106⇒IQ84に低下していたとしても、それが本当に知能の低下を意味するかどうかはっきりしません。

信頼性が高く標準化されたテストとしては、TOEICなどは良いテストですが、英語がよほど得意な人以外はそもそも難易度的に厳しいものがあります。

またTOEICのテスト側は標準化されていても、英語を使う時期/使わない時期などで受験者側の英語力に変動が激しいので、知能の変動そのものは測定困難です。

受験費用や3時間というテスト時間も負担が大きく、なかなか認知症のテスト用としては使えません。

そこで、現段階で誰にでもおすすめできる認知症チェックテストとして一番おすすめできるのが、じつは大学入試のセンター試験なんです。

最強のチェックツールはセンター試験?

自分や家族の知能レベルを判断するために最も良いと思われる方法が、大学入試センター試験の問題を解いてみることです。

数学や世界史などは忘れている可能性がありますが、現代文であれば、大人になってからもちゃんと解くことができるはずです。

むしろ言語能力は年齢が上がったほうが上昇する傾向があり、学生時代よりも高得点になる人もたくさんいます。

日本語の理解力があればよいので、高校の勉強をしていなくてもなんら問題ありません。

センター試験の他の科目は勉強せずに高得点をとることはできませんが、現代文に関しては全く勉強せずとも高得点をとれる人がかなりいます。受験生に酷な話ですが、現代文は勉強の成果よりも、もともとの知能がストレートに現れやすいのです。

もともとの頭が良い人の場合、毎回満点近くになる可能性はありますが、それでもIQに換算すれば上限110~120くらいまでは測定可能だと思われます。

通常の認知症テストでは分からない「正常範囲内」での変化を把握することができます。

「まだまだ正常な範囲」であっても本来の自分よりも知能低下が起こっていれば点数が下がりはじめるので、それをきっかけに認知症の兆候に気づくこともできるでしょう。

センター試験は毎年100万人近くが受験するテストで、日本最大規模のテストのひとつです。しかも年度によって難易度に差が出ないよう、細心の注意を払って作成されています。

過去問も本屋さんで入手できますし、毎年新しいテストが公開されます。

これらの点から、大学入試センター試験(現代文)は、大人が自分の知能の変化を把握するために、信頼性・利便性ともに非常に高いテストなんです。

もちろんテストの点数というのは、その人の能力のほんの一部分を切り取ったものにすぎません。テストの結果そのものよりも、過去の自分と比べて大きな変化があるかどうかを確認することに意味があります。

正答率90%⇒70%になったら危機感を覚えるべきですし、正答率40%⇒60%になったら脳が成長していると喜ぶべきです。

毎年センター試験の実施日(1月15日前後)の翌日には受験予備校や新聞で問題・回答が公開されますので、1年に1回、センター試験を解くことを習慣にすれば、それだけで認知症チェックに役立ちます。

家族の新年イベントにしておけば、家族全員の認知症チェックが出来てしまいますよね。

ただし、ここ数年のテストではメイド喫茶についての文章が出題されたり、サブカル色が強い傾向があります。

『時代』を知るという点ではメリットがありますが、家族で解くのはちょっと恥ずかしいかもしれませんね。

でも、かなりおすすめです。

まとめ:脳を映し出す鏡を持とう

私たちは毎日鏡を見て、身だしなみをチェックします。

もし鏡がなければ、寝癖があっても、目やにがついていても、シワが増えていても気づけません。

皮膚の表面や髪型はバスルームの鏡に映りますが、残念ながら現代の技術では鏡で脳の中までは映し出すことは不可能です。

そのため脳の状態を映すためのテストが必要になります。

例えばダイエットをしている時は、体重計に乗って体重を確認しますよね。

体型は目でも見えるのに、それでも体重計を使います。そうやって数字にしないと、自分自身の状態を客観的に判断できないからです。

目に見えない脳の状態であればなおさらです。

ただし今回紹介したような認知症チェックテストには大きな問題点があります。

それは、知能テストに現れる結果というのは、認知症の症状のごく一部分に過ぎないということです。

特に性格変化が先に現れるタイプの認知症(前頭側頭型認知症、アルコール性認知症など)は、比較的後期まで知能が維持されると言われています。

自分では後頭部の寝癖は見えないのと同じように、知能テストに現れない認知症の兆候を見逃さないためには、自分以外の目線も必要です。

そこで大切になるのが、身近な人の存在です。

認知症の兆候には、知能の低下以外にも、面倒くさがりになる、だらしなくなる、運転が雑になる、暴力的になるといったものもあります。

これらの変化は自分では非常に気づきにくいですが、家族や友人であれば気づける可能性も高いはずです。

認知症以外にもうつや他の病気の可能性もありますが、どちらにしても早期に発見することに大きな意味があります。

本当に認知症が始まった時に気づけるかどうか?
そして本人に指摘できるかどうか?
自分が指摘してもらえるかどうか?

そのためには、認知症についての知識と同じくらい、認知症についてオープンに話ができることが大切です。

ところが、認知症というものが私たち一般人には難解なだけでなく、認知症について発言したり話をすること自体がタブーになっている気がします。

認知症における「助け合い」というのは介護に限った話ではないはずです。予防・発見の段階での助け合いだってアリだと思うんです。

耳障りの悪いことも含めて、認知症について知ること、自由に話せることが、予防や早期発見、認知症への適切な対応につながると思っています。

そのために、今回の記事が少しでも役立てば幸いです^^