認知症の特徴|意外と知られていない10の”事実”

認知症対策は準備が9割

「認知症にはなりたくない」

そう思わない人はいないでしょう。

ところが例え家族の介護で大変は思いをした人であっても、多くの人は自分が認知症になるのは「遠い将来の話」だと考えています。

20年後?30年後?40年後?

少なくとも『今』の問題ではないと思っていますよね。

現実は、想像とは異なるかもしれません。

例えば認知症の多くのケースでは、20年~30年以上の時間をかけて、徐々に認知機能の低下が進行します。

最終的に『認知症の診断』という結果が出るのは先の話でも、認知症に至るプロセスは現在進行中なんです。

それなのに、学校でも教えてくれませんし、一般的に知られていないこともたくさんあります。

そこで認知症の特徴について、自分や家族が健康なうちに知っておくべき最低限の基礎知識をまとめてみました。

認知症そのものは病気ではない

認知症の原因となる病気は70種類以上あると言われています。

つまり認知症そのものは病気ではなく、認知機能の衰えた結果、日常生活に支障が出るようになった『状態』です。

病気であれば、基本的には病気の原因を取り除くことで治りますが、
認知症を治すといった場合、認知機能の低下を止めたり、認知機能を改善させることが目標になってきます。

ただし認知機能を改善するというのは簡単ではありません。認知機能には記憶力や判断力など色々な要素がありますが、そういう能力が簡単には良くならないことは、少しでも勉強やスポーツ、仕事を考えてみれば明らかです。

むしろ一度衰えてしまった認知機能を改善することが困難だからこそ、今ある能力を失わないために、認知症の予防が最も大切なんです。

20年以上前から始まっている

認知症を予防するためには40代、50代の過ごし方が重要だと言われます。

その理由は、40代や50代のうちから認知症が水面下で進行している可能性が高いからです。

認知症の7割近くを占めるアルツハイマー型認知症は、20年~30年以上の進行期間を経て、最終的に認知症に至ります。

認知症と診断されるのが60歳~70歳頃だったとしたら、40代にはアルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβの蓄積が始まっているんです。そして、気がつかないレベルで認知機能も徐々に衰えています。

40代、50代の人にとって認知症は「将来の問題」に思えるかもしれませんが、おそらくその認識は間違っています。

40歳を超えたら、認知症は遠い未来の問題ではなく、既に目の前にある「今の問題」なんです。

重症化するまで気づかない

認知症という言葉を知らない人はほとんどいませんが、実際に自分や家族が認知症になったときに気づける人は少ないと言われています。

その主な理由は3つ。

1:知識が不足している

脳の状態は目に見えないので、認知症に気づくには行動から判断するしかありません。ところが判断基準となる知識そのものがないんです。野球のルールを知らずにアウトかセーフを判断するようなもので、かなり無理があります。

身近な人の認知症を経験している「経験者」であっても、早期発見となると難しいこともあります。認知症の初期症状は人によって大きく違うからです。物忘れが全くないこともあります。

どのような時に認知症が疑われるのか?ある程度知っておくことは、認知症対策の第一歩だと思います。

2:本人も家族も慣れてしまう

「ゆでガエル」という話があります。カエルをお湯にいれ、徐々に温度を上げると、かなりの高温になっても中々気づきません。最終的に体が悲鳴を上げるようになって初めて、お湯が熱湯になっていることに気づくという話です。

認知症は20年以上の時間をかけてゆっくり進行します。そのため本人も家族も、少しずつ慣れてしまい、ゆでガエル状態になってしまいます。

そして日常生活に大きな支障が出るようになってから、認知能力が大きく衰えてしまったことに気づくことになります。

3:不都合な真実だから

認知症であることは、本人も家族も、認めたくない事実です。本人にとっては今後の生活の変化を意味し、プライドも傷つきます。家族にとっても介護などの問題と直面することを意味します。

明確に認知症と診断された時でも、ほとんどの人は「そんなことはない!」と強く否定することからも、自ら認知症を認めるのは難しいことが分かります。

誰も認知症になりたいとは思いません。

私たちは見たいものしか目えず、見たくないものは目の前にあっても見えません。

明らかな認知能力の低下があっても、歳のせい、環境のせい、気分のせい、天気のせいなど、ありとあらゆる言い訳をして、認知症であることを認めたがりません。

そのため認知症の自覚症状が出る前の段階であっても、専門医などの客観的な立場の人から意見を聞くことが大切です。

症状は記憶障害だけではない

認知症は「物忘れ病」とも言われるように、一般には記憶障害のイメージがあります。

たしかにアルツハイマー型認知症では記憶障害が「目立つ」症状ではありますが、中には全く記憶障害が起こらないケースもあります。

例えば前頭前野を損傷した人には、記憶力や知能面では全く問題がなくても、感情コントロールが全くできなくなることがあります。

むしろ知能面よりも性格面での変化のほうが、発見が遅れることもあり本人も周囲も対応に困るケースも多いのです。

認知症の影響はすべての行動に及ぶことを理解しておく必要があります。

誰にでも起こりうる。例外は存在しない。

医者が認知症になることもありますし、大学教授が認知症になることもあります。

地位も学歴も年収も脳の安全を保証してくれません。

もちろん社会的評価の有無に関わらず、誰にとっても自分は特別な存在です。「自分は大丈夫」と思ってしまいます。

ですが認知症+予備軍で800万人を超える現在の日本では、自分だけは大丈夫だと考えるのは楽天的過ぎると言わざるを得ません。

認知症は誰にでも起こりうる人生のリスクファクターです。

脳の生活習慣病とも言われている

認知症は生活習慣病であるという意見もあります。

突発的に起こる現象ではなく、何十年もの積み重ねの上に発症するという意味では、確かに他の生活習慣病と共通点は多くあります。

そして、糖尿病や高血圧などが相互に関連しているのと同じように、生活習慣病のリスクが高い人=認知症のリスクも高い人でもあるんです。

少なくとも糖尿病や高血圧だと認知症になる確率が2倍以上になります。

逆に、生活習慣病のリスクを下げる努力は、認知症のリスクを下げることにもつながるということです。

食事や運動習慣でリスクが下がる

例えば高血圧を改善するためには2つのアプローチがあります。ひとつは降圧剤を使って、薬で血圧を下げるアプローチ。もうひとつはオメガ3を増やすなどの食生活の改善と有酸素運動などで、生活習慣を変えることで高血圧を徐々に改善するアプローチです。

両方とも「血圧」という数値を見れば同じかもしれませんが、認知症予防にもなる生活習慣病対策という点からみれば、優れているのは当然後者の食事・運動習慣を改善することです。

オメガ3を多く含む地中海食を食べる人や運動習慣がある人は認知症になる確率が低いことが統計的に明らかになっています。

現状では認知症の根本的治療は困難とされているので、他の生活習慣病と比べても食事や運動などの重要性は高いとも言えますね。

早期治療が効果的と言われている

完全に認知症を治すことはできなくても、認知機能の低下を緩やかにしたり、ある程度の改善は可能だと言われています。

そして、早期段階で治療をスタートするほど、高い改善効果が期待できると言われています。

その理由のひとつとして、認知機能は加速度的に低下していくからです。

例えば集中力が落ちる⇒集中力が必要な行為をしなくなる⇒ますます集中力が落ちる、という負のスパイラルが起こるので、症状が進行するほど治療は困難になります。

逆に集中力が少し落ち始めた段階で、集中力を上げるためのリハビリなどの治療を行うことで、認知機能の低下を防げる可能性も高くなります。

部屋の片付けだって同じですよね。いつも部屋がキレイな人は散らかしたらすぐ片付けています。散らかしたまま放置すれば、片付けはどんどん面倒になることを知っているからです。

脳のメンテナンスも、部屋のメンテナンスと同じようにマメに行うことが大切なんです。

専門家でも意見が異なることが多い

認知症の完全な治療方法は確立されていません。そのため専門家の間でも、診断や治療方針について色々な意見があります。

病名の診断が異なることも珍しくありませんし、特に投薬の方針については、医師により大きな差があるようです。

しかも認知症の治療方針は長い期間に渡り、本人にも家族にも大きな影響を及ぼします。

治療方針に納得がいかない場合、セカンドオピニオンを求めることも大切ですが、セカンドオピニオンは患者側に十分な知識があることが前提です。

認知症に限りませんが、ただ耳障りの良い言葉を求めてドクターショッピングを繰り返してしまう人がいるのも現実です。

なにより症状が本格的に始まってからでは、本人も家族も冷静な判断がしにくくなります。

そこで認知症になる”前”にこそ、専門医を含めて色々な専門家の意見を聞くことが大切です。

あらかじめ信頼できる医師や治療や介護の方針を見つけておくことで、万が一の際にも落ち着いた対応がしやすくなるように思います。

その時になってからでは遅い

人生は、その時になったら考える、というスタンスでうまくいくこともあります。逆にその時になってからでは遅いこともあります。

認知症対策については、完全に後者です。

その理由は、認知症により様々な意志決定が困難になるからです。

現代の社会のしくみ上、年金や要介護認定、生活保護の受給などから携帯電話の修理に至るまで、すべて本人の意志が原則になっています。

意志決定ができなければ、正当な権利ですら行使できないこともあるんです。

意志決定力は十分な思考力と判断力を前提としています。

子どもにできないことが多いのは、十分な思考力と判断力が備わっていない可能性があるからです。

ところが認知症は、思考力や判断力を奪い、意志決定そのものを困難にします。

そのため行政サービスの申請、衣食住の環境、治療や介護の方針、事故などの際の責任の所在、相続問題、延命措置の有無まで、決めるべきことはたくさんあるのに、自分自身で決めることができなくなっていきます。

健康な時であればできたことが、認知症になった後ではできなくなる。

それは服が着れなくなったり、入浴ができなくなるといった「日常生活に支障が出る」ことだけではなく、意志決定を必要とするすべてのことができなくなることを意味します。

だからこそ、健康なうちに、思考力と判断力があるうちに、色々な準備を進める必要性が高いんですね。

まとめ:手に入れること、守ること

私たちは何かを手に入れることには一生懸命になりますが、手に入れた物を守ることには驚くほど無頓着だったりします。

その典型的な例が、認知症だと思います。

認知機能を良くすること、すごく単純に言えば「知能を高くすること」については、かなり一生懸命です。

あくまで一例ですが、有名大学に合格するために子どもを小学校から塾に通わせる場合などは、大学合格という目に見える結果に向けて、10年ぐらい前から『準備』しているわけです。

10年間、認知機能向上のために努力を続けているとも言えます。

ところが、一度手に入れた「頭の良さ」を守るために、どれだけの人が10年間努力を続けているでしょうか?

誰でも年齢が上がれば脳は萎縮し、認知機能は低下していきます。

最終的に『認知症』というラインまで低下するかどうかを決めるのは、運だけではありません。

環境を含め、本人の努力次第で変えられる部分もたくさんあります。

最終的な結果が分からないのは、大学受験も仕事も結婚も同じです。

それでも私たちは、少しでも幸せになりたくて、色々な努力をします。

だとしたら、大学合格、仕事の成功、理想の結婚など、目に見える結果を手に入れるための努力と同じくらい、認知症の診断という目に見える結果を”避ける”ための努力をするのは、決して大げさではないと思うんです。

幸せは手に入れるだけでなく、守るべきものでもあります。

自分と家族の幸せを守るためにできることは何か?

考えるための小さなきっかけになれば幸いです。